「親と子どもの会話」は非常に大事!

優秀な子は「しっかりと話せる」

優秀な子に共通する能力とは何ですか?と聞かれたらなんと答えるでしょうか?

それは、「きちんとしゃべれること」です。と答えたのは、開成高校の元校長先生、柳沢幸雄氏です。

これは、本当にその通りだと思います。よく授業で感じることなのですが、勉強が得意な生徒は、授業中に当てて説明させると、簡潔でわかりやすく、論理的に伝えることができます。また、授業外での雑談でも、主語述語が分かりやすく、話を聞いていてストレスがありません。

一方で、勉強が苦手な生徒は、授業中に説明させても雑談中でも「ん?どういうこと?」と、スムーズに話が入ってこないことが多いです。また、質問に対して頓珍漢な回答をすることも多々あり、話をしていて噛み合わないことがよく起きます。

なぜ「話し方」で優秀さがわかるのか?

なぜ、話し方で優秀さがわかるのか?それは、人間が言葉を使って思考し、言葉を使ってアウトプットするからです。たとえば、会話をするときは言葉で考え、言葉を口にします。問題を解くときも同様に言葉で思考し、言葉で書き表します。

本当は頭の中をパカっと開けて、思考の様子を把握したいのですが、それはできません。そのため、アウトプットされたものを見ることで、その人の優秀さを測ります。しっかりと話ができる、ということは、論理的に思考できているということです。

親との会話が非常に重要

では、どうやって「しっかりと話せる」ようになるのか?本題に入っていきましょう。まず、しっかりと話せる生徒と、そうでない生徒に分かれるのはなぜでしょうか?

それは「親と子どもの会話」に原因があると思います。

そもそも、しっかりと話せる子は、わかりやすく話すことを日頃から行なっていたからこそ、その話し方ができるわけです。彼らが生後最も頻繁に会話をしているのは親でしょう。そして、親との会話の中でわかりやすく話す練習を無意識に行っていたはずなのです。

親との会話で一番重要なことは、親の相槌です。つまり、論理的に話をするように、仕向けなくてはなりません。たとえば、主語がない会話をしていたら「誰がそれをしたの?」と聞きますし、いつ?どこ?などの情報がなかったら、「それはいつ起きたの?」「どこで起きたの?」などと5W1Hを引き出す必要があります。

こういう相槌は、親御さんが無意識的にやっている場合もありますし、意識的にやっている場合もあるでしょう。いずれにせよ、日頃からこういう話し方をし続けていると、論理的にものごとを伝える力は養われるはずです。読解力を身につけたい場合も、本を読むより、子どもが親とたくさん会話する方が、はるかに効果的だと思います。

親との会話は、子どもにとって非常に有効な勉強方法です。読解力がない。論理的思考力がない。と言われて久しいですが、共働きやスマホによる子と親の会話量の低下が原因の1つにあるのではないかと思っています。

5W1Hを引き出す相槌とは?

会話で意識してほしいことは、主語述語を補う相槌をすること。5W1Hを引き出す相槌をすることです。5W1Hとは「When:いつ」「Where:どこで」「Who:だれが」「What:何を」「Why:なぜ」「How:どのように」のことですね。これを引き出してあげてほしいのです。

たとえば、こんな感じです。
子:これ買ってー
親:いくらなの?(How much)
子:んーとね、120円。
親:なんでそれがほしいの?(Why)

こういう聞き方をすると、説明する力が養われます。親の相槌が非常に重要ですね。

一方で、だめな相槌はこんな感じです。
子:これ買ってー
親:これがほしいの?
子:うん。
親:じゃあ、カゴに入れて!
子:うん。

だめな相槌とは、子どもにYes, Noで答えさせる相槌ですね。親が先回りして、子どもがこう言いたいんだろうなぁとか、こう思っているんだろうなぁと考えてしまっています。つまり親が考えてしまって、子が考える機会がないのです。

また、自分の子どもと話をしていると疲れる。。と感じる親御さんもいます。子どもとの会話に疲れていると、早く会話を切り上げようとし、すると、Yes, Noで答えられる相槌をしがちです。

実際にあった話

ずいぶん前の話ですが、個別指導塾で働いていた時のことです。入塾面談で初めて対面する生徒に「得意な科目は何ですか?」と質問したとき、横に座っていた親御さんが「数学だよねー?でも理科は苦手だね。」と答えました。

こちらはお子さんに質問したのに、その後の質問も全て親御さんが答えていました。当の本人も、先生の方を見ることはほとんどなく、横に座っているお母さんをずっと見て、何か言う場合は、お母さんの耳元でボソボソっと伝え、それをお母さんがこちらに伝えるという話し方でした。中学2年生の生徒でした。

国語と英語の指導を担当することになり、最初の授業で衝撃的だったことが、文章で会話ができないことです。質問はするのですが、「うん・いいえ」などの回答しかしません。たとえば「なんで3番だと思ったのか説明してほしいな」と伝えても、黙ってしまいます。こちらも気を遣ってしまい、ついつい、「理由はわかんないけど3番だと思った?」と聞くと、生徒は頷きます。

思考をする癖が本当にないんだなぁと思いました。学力は国語も英語もボロボロでした。得意だと言っていた数学でも、テストで50点ほどです。でも、親御さんはびっくりするくらい良い方でした。僕が授業でマスクをしていると、それを子どもから話を聞いたのでしょう、次の授業でのど飴をいただいたり、また授業中にぼそっと〇〇のチョコレート美味しいよねぇと言うと、またまた子どもに聞いたのか、チョコをプレゼントしてくれたりと、いろいろなものをいただきました。

今考えると、こういう話し方を子どもにした方がいいですよ!とアドバイスした方が良かったかもしれませんが、当時はそれもせず、日々指導をしていました。親御さんがとても優しい方だったからこそ、余計に言いにくかったことを覚えています。でも、子どものことを考えると、ちゃんと伝えた方が良かったですかね。

当時の反省も踏まえ、こういう経験談を文章にして、これを読んだ方々に少しでも考えるきっかけになっていただければ幸いです。