ずいぶん前の話ですが、個別指導塾で働いていた時のことです。入塾面談で初めて対面する生徒に「得意な科目は何ですか?」と質問したとき、横に座っていた親御さんが「数学だよねー?でも理科は苦手だね。」と答えました。
こちらはお子さんに質問したのに、その後の質問も全て親御さんが答えていました。当の本人も、先生の方を見ることはほとんどなく、横に座っているお母さんをずっと見て、何か言う場合は、お母さんの耳元でボソボソっと伝え、それをお母さんがこちらに伝えるという話し方でした。中学2年生の生徒でした。
国語と英語の指導を担当することになり、最初の授業で衝撃的だったことが、文章で会話ができないことです。質問はするのですが、「うん・いいえ」などの回答しかしません。たとえば「なんで3番だと思ったのか説明してほしいな」と伝えても、黙ってしまいます。こちらも気を遣ってしまい、ついつい、「理由はわかんないけど3番だと思った?」と聞くと、生徒は頷きます。
思考をする癖が本当にないんだなぁと思いました。学力は国語も英語もボロボロでした。得意だと言っていた数学でも、テストで50点ほどです。でも、親御さんはびっくりするくらい良い方でした。僕が授業でマスクをしていると、それを子どもから話を聞いたのでしょう、次の授業でのど飴をいただいたり、また授業中にぼそっと〇〇のチョコレート美味しいよねぇと言うと、またまた子どもに聞いたのか、チョコをプレゼントしてくれたりと、いろいろなものをいただきました。
今考えると、こういう話し方を子どもにした方がいいですよ!とアドバイスした方が良かったかもしれませんが、当時はそれもせず、日々指導をしていました。親御さんがとても優しい方だったからこそ、余計に言いにくかったことを覚えています。でも、子どものことを考えると、ちゃんと伝えた方が良かったですかね。
当時の反省も踏まえ、こういう経験談を文章にして、これを読んだ方々に少しでも考えるきっかけになっていただければ幸いです。