子どもを伸ばす最大の要因は『親との会話』である

優秀な子は「きちんとしゃべれる」

優秀な子に共通する能力とは何ですか?と聞かれたらなんと答えるでしょうか?

それは「きちんとしゃべれること」と答えたのは、開成高校の元校長先生、柳沢幸雄氏です。

これは、本当にその通りだと思います。よく授業で感じることなのですが、勉強が得意な生徒は、授業中に当てて説明させると、簡潔でわかりやすく、論理的に伝えることができます。また、授業外での雑談でも、主語述語が分かりやすく、話を聞いていてストレスがありません。

一方で、勉強が苦手な生徒に説明させると「ん?どういうこと?」と、スムーズに話が入ってこないことが多いです。また、質問に対して頓珍漢な回答をすることも多々あり、話をしていて噛み合わないことがよく起きます。

なぜ「話し方」で優秀さがわかるのか?

なぜ、話し方で優秀さがわかるのか?それは、人間が言葉を使って思考し、言葉を使ってアウトプットするからです。たとえば、会話をするときは言葉で考え、言葉を口にします。問題を解くときも同様に言葉で思考し、言葉で書き表します。

本当は頭の中をパカっと開けて、思考の様子を把握したいのですが、それはできません。そのため、アウトプットされたもの=言葉を観察ことで、その人の優秀さを測ります。

親との会話が非常に重要

では、どうやってきちんとしゃべれるようになるのか?本題に入っていきましょう。まず、きちんとしゃべれる生徒と、そうでない生徒に分かれるのはなぜでしょうか?

彼らが生後最も頻繁に言葉のやりとりをしているのは親でしょうから、「親と子どもの会話」に原因があると考えるのが合理的でしょう。

そもそも、きちんとしゃべれる子は、きちんとしたしゃべり方をたくさんインプット・アウトプットしているはずです。また、間違えたアウトプットをした場合はその都度訂正される環境にいないといけません。

会話量が少なければインプット不足・アウトプット不足になり上達しませんし、親がきちんとしゃべれなかったり、子どものミスを訂正しない場合も同様に、上達しません。つまり、

  1. 親との会話量が多いこと
  2. そもそも親がきちんとしゃべれること
  3. おかしなアウトプットをした場合は、親に訂正されること

この3点が非常に子どもの優秀さに関係があると私は考えています。さらに1つずつ具体的に見ていきましょう。

1. 親との会話量が多いこと

親との会話が多いということは、「親が子どもにたくさん話しかける」ことだけを指すのではありません。その逆、つまり「子どもが親にたくさん話しかける」という意味も含まれています。

これは勉強やスポーツなど、ありとあらゆる学びに共通しています。インプットだけでは決して身につきません。たとえば数学の問題を解けるようになるには、参考書の解説を熟読しているだけでははダメで、手を動かして問題を解かないと覚えられません。

スポーツも同じですね。プロの試合を見てプロと同じ動きができる人なんていません。それができるなら誰でもイチローになれてしまいます。当然、日々の練習が重要なのです。

ということで、親子でよく話す関係でありたいですね。親子関係が上手くいかないと会話量は激減しますから。

また、子どもから親への会話を増やすには相槌を工夫すると良いです。たとえば、スーパーでの一コマ。ダメな相槌と良い相槌を紹介します。

ダメな相槌:

子:このお菓子買ってー
親:ん?このお菓子がほしいの?
子:うん。
親:じゃあ、カゴに入れて!
子:うん。

Yes, Noで答えるだけだと会話量が増えませんね。なので、5W1Hをつけるようにしましょう!

良い相槌:

子:このお菓子買ってー
親:また?なんでそのお菓子ばかり買うの?
子:えだってーチョコがたくさん入ってて美味しいし、一つ一つ袋に分かれているから、遊ぶ時にも持っていきやすいからさ。
親:なるほどね。でも買ったばかりじゃないっけ?前いつ買った?
子:たしか、2週間くらい前だったと思うよ。

こういう聞き方をすると、自然と会話量が増えます。相槌を工夫して会話量を増やしていきたいですね。

2. そもそも親がきちんとしゃべれること

当たり前の話ですが、子どもは親の背中を見て育つので、親がきちんとしゃべれなければ、当然子どもはきちんとしゃべれません。

これは私の指導経験でも身に染みて感じたことです。以前、指導をしていた中学生の生徒は両親がともに中国の方で、その生徒が生まれる前に日本に来ました。ご両親とも20年近く日本で生活していたので日本語はできます。とはいえ、日本人ほど上手ではありません。特に単語ベースでの会話になりがちで、助詞が抜けます。イメージとしてはこんな感じです。「先生、どう?うちの子?勉強できてる?大丈夫?問題ない?」

その生徒は、生まれた時からずっと日本に住んでいるので、日本語はペラペラです。しかし、国語の音読をさせると「て・に・を・は」などの助詞がことごとく抜け落ちます。本文には書いてあるのに、助詞だけピンポイントで飛ばしてしまうのです。これはおそらく、家庭内での会話が単語ベースになってしまっているからだと思います。

巷では、英語教育の早期化が進み、小さい頃から外国へといった動きもあるようですが、私個人としてはまずは親が使う言葉を子どもにしっかりと継承すべきだと思います。

また、きちんとしゃべるためには、感情や事象に対して、できるだけ適切な表現を使う必要があります。たとえば「笑う」という動詞を1つとっても、爆笑する、ほくそ笑む、ゲラゲラ笑う、微笑む、笑みがこぼれる、ニッコリするなど、さまざまな表現がありますが、語彙が増えることで、より言葉にする機会も増えるので、お子さんとの会話では、より多くの言葉を使いたいですね。

3. おかしなアウトプットをした場合は、親に訂正されること

子どもがきちんとしゃべれるようになるためには、おかしなアウトプットをした際に、しっかりと「それはおかしいよ」と訂正してあげることが大事です。重箱の隅をつついているようで、憚られるかもしれませんが、教育のためには重要です。むしろここを蔑ろにしてしまうと、なかなかきちんとしゃべれるようにはなりません。

このことは、花まる学習会の高濱先生もおっしゃっています。

言葉のニュアンスや用法に敏感である親がしっかりと子どもの言葉に対してフィードバックすることが大事ですね。

子どもとの会話に慣れてくると、言葉の使い方がおかしくても、「きっとこういうことを言いたいんだろうなぁ」と言外の意味を想像して会話をしてしまいがちですが、めんどくさがらずに、しっかりと指摘してあげましょう。