どこまで生徒を注意するか?

当塾の中学生クラスでは、宿題のチェックが毎日あります。生徒は勉強したノートやテキストを写真に撮って先生に送り、チェックをしてもらいます。写真でチェックすることで「しっかりと勉強を行なっているのか」、毎日チェックすることで「勉強の溜め込みはないか、ムラはないか」を確認できます。

このようにOKUNO塾では細かく宿題をチェックしているわけですが、チェックが細かいほど、多くの粗が見えてきます。そして当然粗があれば、改善してもらいたいので注意をします。しかし注意点が複数ある場合、全て注意すべきか、特定のポイントに絞って注意すべきか、とても悩まされます。ということで今回の記事テーマは「どこまで生徒を注意するか」です。

塾ごとの宿題チェック方法

宿題チェックなんて簡単だろう?と思われているかもしれないので、3つのパターンに分類して説明します。

宿題を出すだけの塾

宿題を出すだけで良いので、塾にとっては最も楽です。宿題を雑にやっていても・塾の直前にやっていても・答えを写していても、そもそもチェックをしないので注意する必要はありません。

本人の意思に任せるスタイルなので、通い放題のジムみたいなものです。結果が出るかどうかは本人次第であり、もちろん伸びる生徒もいますが、伸びない生徒も大勢います。この塾で伸びる生徒はどの塾でも伸びます。また、しっかり宿題チェックをすれば伸び幅はもっと大きくなるでしょう。

宿題を出して次の授業時にチェックする塾

おそらく学習塾で最も多いのがこのパターンです。ただ、チェック=提出確認であることが多く、出せばOKといった緩いチェックがほとんどです。というのも、塾の先生は、授業をしながら、その日中に宿題をチェックしないといけません。休憩中や授業で生徒が問題を解いている間など、せいぜい15分ほどしかない中で宿題をチェックするので、細かく見ることなど不可能です。そのため、答えを写していても、全て丸で出しても許されるでしょう。

また、提出確認は次の授業時であることが多いので、直前に一気に宿題を終わらせ、その他の日はほとんど勉強しない、といった勉強のムラがあるかどうかは確認できません。勉強しているのに伸びない生徒の多くは、このような勉強のムラが原因です。1日で一気に問題を終わらせるので復習のサイクルができず、知識が抜け落ちてしまいます。

宿題を出して、毎日チェックする塾

OKUNO塾はこれです。大変さで言えば、最も大変です。授業日はもちろん、授業がない日も、祝日も365日チェックします。また、チェック内容は細かく、①答え合わせをしているか、②丸つけが雑でないか、③答えを写していないか、④間違えた問題は答えを書く以外にメモやポイントを書き込んでいるか、⑤覚えようと努力しているか・工夫しているかなど、細かく項目を作っています。これを全教科見ます。

中学受験を経験されている方ならある程度わかると思いますが、勉強の管理やチェックは非常に大変です。中受では、学習管理のしんどさからノイローゼになってしまう親御さんがいるくらいです。細かくチェックしようとすればするほど、言いたくなることが増え、子どもとの喧嘩も増えます。学習管理は重要ですが、一方で、叱りすぎるとやる気が削がれてしまいます。このバランスがとても難しいのです。

どこまで注意するか?

毎日の宿題チェックは学力向上に欠かせないので続ける必要がありますが、では生徒から出された宿題に問題点があった場合、どのように指導したらよいでしょうか?具体的な事例と共に考えてみたいと思います。

前提条件:
・宿題の提出時刻は23:00
・必ず○付けをして出す
・間違えた問題は直して出す

生徒から出された宿題:
・提出時刻が23:45だったが、一言もことわりがない
・数学の問題は明らかに答えを写していた。(∵途中式がないと解けない難しい問題に答えしか書かれておらず、また全て正解している)
・理科の宿題は、○付けはされていたが、間違っているものにも○がついている
・本来出すはずの漢字の宿題が出されていないが、言及されていない

上記の例では、同時に4つの問題点があるわけです。当然4つ全てを改善してもらいたいのですが、とはいえ全てを注意した方が良い訳ではありません。

例えば、理解力が乏しい生徒や、読解力がない生徒の場合、一気に言うと、理解できなくなってしまうことがあります。こういう生徒の場合は、1つずつ指摘することが大事です。

また、一気にたくさんのことを注意されると、やる気がなくなってしまう生徒もいます。学習塾の目的は学力を上げることなので、やる気の低下は避けなければなりません。特に不貞腐れてしまうような性格の生徒には、気を配って指導しないと塾に来なくなってしまいます。そのため、このような生徒には4つの注意点のうち特に改善してほしい1つに絞って指摘し、あとの3つは目を瞑ることが大事です。

つまり生徒の性格に合わせて指導を指導をしないと、改善はしないのです。会社で部下のマネジメントをしているのと同じですね。ただ塾の場合、相手は社会人ではないので、理解力ややる気が非常に低い場合があります。

社会人に必須のホウレンソウを鍛える

宿題のチェックを細かくすると、必然的に報告・連絡・相談のトレーニングにもつながります。これは社会人になる上で必須のスキルですね。

例えば、宿題の提出時刻に遅れそうな場合は、事前に報告をし、遅れた理由と何時ごろ提出するのかを連絡するようにさせています。社会人になって、資料の提出や会議に遅れそうな場合、事後報告はあり得ないですよね。事前に伝えることが大事です。(そもそも遅れないことが大前提ですが…)

中学生にそこまでさせるのは難しいと思われるかもしれませんが、体感では8割の生徒は問題なくクリアしています。できる生徒は入塾時点ででき、できない生徒は何度も指導されて、ようやく改善するといった印象です。

こういったスキルは、学校ではほとんど鍛えられないので、家庭内での教育によるものかと思います。

学力上位の生徒は自ら提案ができる

当塾では、予め立てた学習計画を元に宿題を行なっています。計画は翌週1週間の学習内容を日割りで立てていくのですが、毎日の宿題チェックを行なっていて、自分から提案できる生徒たちは、とりわけ優秀であることに気付かされます。

たとえば、難しい単元が宿題になった場合、「今日の単元が難しかったので、翌日に追加で復習の宿題を入れてもいいですか?」と提案したり、「よく理解できず、参考書を見ながら進めていたため、今日の宿題が全て終わりませんでした。そのため翌日に今日の分の残りを終わらせます。」などと、もともとの学習計画にない提案もしてきます。

これは、学力を上げることが目的だと自分で考えられているからです。 自立ですね。なかなかできることではありません。宿題を終わらせることが目的になってしまうと、理解したかどうかは後回しとなってしまいますが、自立している生徒は目的から逆算できます。

OKUNO塾では、生徒全員に自ら考え提案できるよう指導しています。決して先生に言われたことだけを鵜呑みにするのではありません。自ら考えて、目的を達成するために行動する。そんな生徒を1人でも多く輩出したいと思っています。